「自分の仕事もAIに置き換えられるのではないか」
生成AIのニュースを見るたびに、今の仕事を続けてよいのか不安になる人は少なくありません。
マーサーが公表した「グローバル人材動向調査2026」では、AIによる雇用喪失へ不安を感じる従業員は、世界全体で2024年の28%から2026年には40%へ上昇しました。日本でも37%が不安を感じています。
ただし、不安になったからといって、すぐに仕事を辞めたり、未経験のAIエンジニアを目指したりする必要はありません。先に確認すべきなのは、職種名ではなく、自分の仕事に含まれる作業です。
結論:仕事全体ではなく「変わる作業」を見分ける
AI時代のキャリア準備は、次の5つです。
- 毎日の仕事を作業単位へ分ける
- AIに任せやすい作業を見つける
- 人に残る判断と責任を言葉にする
- AIを使った改善実績を1件作る
- 求人で求められるスキルと照合する
「事務職がなくなる」「営業は残る」といった大きな分類だけでは、自分への影響は分かりません。同じ職種でも、定型入力が中心の人と、顧客の事情を聞いて提案を調整する人では、AIの影響が異なります。
AIへの雇用不安が高まっている
マーサーの調査は、世界16地域・16業界の経営幹部、HRリーダー、投資家、従業員など約1万2,000人を対象に行われました。
AIによる雇用喪失への不安が世界で40%、日本で37%に達しただけでなく、自分のスキルが今後も通用するかを懸念する従業員は、世界で2024年の17%から2026年には47%へ増えています。
さらに日本の従業員の65%は、AIやデジタルスキルを学ぶ機会を得られるなら、給与10%増を犠牲にしてもよいと回答しました。この結果は、給与だけでなく「将来も働ける力」を重視する人が増えていることを示しています。
ただし、これは給与を下げてもよいと勧めるものではありません。調査上の意向であり、転職条件を決める際は、生活費、職務内容、学習機会、評価制度を個別に確認する必要があります。
AIに任せやすい仕事、人に残りやすい仕事
AIは、情報の整理、要約、下書き、分類、比較案の作成を速くできます。一方、出力が正しいかを確認し、現場の事情を踏まえて決め、結果へ責任を持つのは人です。
| AIに任せやすい作業 | 人が担う価値 |
|---|---|
| 会議メモの整理 | 合意事項と責任者の確認 |
| 提案書の構成案 | 顧客事情に合う提案の決定 |
| 求人情報の比較 | 自分の生活と価値観による選択 |
| データの一次分類 | 異常値の判断と対応 |
| 定型メールの下書き | 相手との関係に配慮した最終表現 |
大切なのは、AIを使わないことではありません。AIへ任せる範囲と、人が責任を持つ範囲を説明できることです。
1. 毎日の仕事を作業へ分ける
まず、1日の仕事を10個程度の作業に分けます。
例えば営業なら、見込み客の検索、商談準備、ヒアリング、提案、見積作成、社内調整、フォローなどです。事務なら、受領、入力、確認、問い合わせ、承認依頼、保管などに分けられます。
職種名だけを見て「なくなる」と考えると不安が大きくなります。作業へ分けると、変化する部分と残る部分を冷静に見られます。
2. AIに任せやすい作業を選ぶ
繰り返しが多い、形式が決まっている、文章や情報の整理が中心。このような作業はAIで支援しやすい領域です。
ただし、個人情報、機密情報、顧客データを扱う場合は、会社の規程と利用可能なツールを必ず確認します。便利だから使うのではなく、安全に使える条件を確かめることが先です。
3. 人に残る判断を言葉にする
「AIにできないこと」だけを探すのではなく、自分が普段行っている判断を書き出します。
- 優先順位を変えた理由
- 相手に合わせて説明を変えた場面
- ミスやトラブルを防ぐために確認したこと
- 複数案から1つを選んだ基準
- 周囲を巻き込んだ方法
本人には当たり前でも、これらは仕事の価値です。AIを使うほど、判断基準を持つ人の重要性は高まります。
4. 小さな改善実績を作る
転職前に、AIを使った小さな実績を1件作ります。
「生成AIを使った」だけでは不十分です。使用前、工夫、使用後の順で記録します。
例:社内FAQの下書き作成で、公開可能な規程だけを参照し、回答候補を生成。原文との照合表を作り、確認時間を毎回20分短縮した。
数値が取れなければ、抜け漏れが減った、確認手順を標準化した、担当者以外も作業できるようになった、といった変化を具体的に残します。
5. 求人と照合する
求人票を5件集め、共通して求められる経験を数えます。AIという単語だけでなく、業務改善、データ活用、プロジェクト推進、顧客折衝、教育、マネジメントなども確認します。
次に、自分の経験で対応できるもの、学び直しが必要なもの、応募先で確認したいものへ分けます。
求人を見る目的は、不安を増やすことではありません。市場が求める内容と自分の現在地の差を知り、次の行動を1つに絞ることです。
転職を急ぐ前に確認したいこと
- 今の会社でAIを実務利用できる余地はあるか
- 異動や担当変更で経験を広げられないか
- 転職先はAI研修だけでなく実践機会を用意しているか
- AI活用が評価項目や業務設計へ反映されているか
- 学習時間を勤務時間内に確保できるか
「AIに強い会社」という広告表現だけでは判断できません。面接では、実際の利用例、許可されたツール、教育後の実務、評価方法まで質問しましょう。
FAQ
AIでなくなりやすい職種は何ですか
職種全体を一律に断定することはできません。同じ職種でも作業内容や責任範囲が異なります。定型作業の割合と、人が担う判断・対人調整・責任を分けて確認してください。
今からAIエンジニアを目指すべきですか
全員がAIエンジニアになる必要はありません。まず自分の専門分野や現場経験へAIを掛け合わせる方が、短期間で実績を作りやすい場合があります。
AIを使った経験を職務経歴書へどう書きますか
ツール名だけでなく、課題、担当範囲、安全上の配慮、自分の判断、結果をセットで書きます。自主学習の場合は実務実績と混同せず、自主制作として記載します。
まとめ
AIによる雇用不安は、気のせいではありません。しかし、不安だけで転職を急ぐと、自分が積み上げてきた経験まで捨ててしまう可能性があります。
仕事を作業へ分け、AIへ任せる部分と人に残る判断を見つけ、小さな改善実績を作る。これが、20代・30代が今日からできる準備です。
AIキャリア・アカデミーでは、これまでの経験を捨てず、AIを掛け合わせて転職と転職後の実績へ変える方法を扱っています。
出典
※調査は2025年9月~10月に、世界16地域・16業界の約1万2,000人を対象として実施されました。日本と世界全体の数値を本文で区別しています。
一人で整理しきれないときは
何が向いているのか、次に何を学ぶべきか、いつ動くべきか。ここは人によって答えが違います。国家資格キャリアコンサルタントとして24年、4.5万人ほどの相談を受けてきました。求人を急いで紹介することはしません。
