AIで仕事を失うのが不安な人へ|日本の37%が感じる雇用不安と転職前に準備する5つのこと

AIで仕事を失うのが不安な人へ|日本の37%が感じる雇用不安と転職前に準備する5つのこと

「自分の仕事もAIに置き換えられるのではないか」。新しい生成AIの発表を見るたびに、今の働き方を続けてよいのか不安になる人もいるでしょう。できることが増えたというニュースと、自分の担当業務がどう変わるかは、同じ話ではありません。ニュースだけで退職や転職を決める前に、まず自分の仕事を具体的な作業へ分けてみてください。

転職前に準備することは、次の5つです。職種名だけで判断せず、自分の仕事と応募先の条件を順に確かめます。

  1. 担当業務を作業ごとに分け、入力する情報・成果物・最終確認者を書き出す。
  2. 各作業でAIが支援できる部分と、人が判断・確認する部分を分ける。
  3. 今の仕事で試した改善を、変更前の課題・自分の行動・確認できた結果として記録する。
  4. 応募先の求人票と照らし、自分の経験で示せる条件と、まだ足りない条件を分ける。
  5. 転職だけに絞らず、現職での学習や異動も含めて、希望する働き方との合致を比較する。

マーサーの「グローバル人材動向調査2026」では、AIによる雇用喪失に不安を感じる従業員は世界全体で40%、日本で37%でした。ただし、この数字は将来仕事を失う人の割合を予測したものではなく、回答者が感じている不安を表します。不安の大きさを認めながらも、次の行動は自分の仕事内容、会社の利用規程、求人で求められる経験を照らして決める必要があります。

「職種が消えるか」より、担当している作業を確かめる

職種名から担当作業へ分けて考える流れ

「事務職はAIでなくなる」「営業職なら大丈夫」といった職種名だけの予測は、個人の転職判断には粗すぎます。同じ事務職でも、決まった様式への入力が中心の仕事と、問い合わせ内容を読み取り、複数部署へ確認して回答をまとめる仕事では、日々の判断が異なります。営業でも、提案書の下書きを作る時間と、相手の事情を聞きながら提案内容を調整する時間は分けて考えられます。

一日の仕事を振り返り、作業名、入力する情報、成果物、最終確認者を書いてみましょう。例えば「問い合わせ対応」という一語なら、質問を受け取る、必要事項を聞き返す、規程を調べる、回答案を作る、例外を判断する、送信前に確認する、と分解できます。AIが支援できそうなのは回答案の構成かもしれませんが、例外の判断や送信責任まで自動的に移るとは限りません。

ここで大切なのは、AIにできるかできないかを一度で決めつけないことです。現場で必要な正確さ、扱う情報の機密性、間違えたときの影響、会社が認めるツールの範囲によって、同じ作業でも使い方が変わります。「仕事を丸ごと取られる」という不安を、まず「どの工程がどう変わる可能性があるか」という確認可能な問いに直します。

作業を書き出すときは、目立つ成果だけを選ばないでください。予定の変更を関係者へ伝える、前工程の誤りを見つける、引継ぎ相手が迷わないよう記録する、といった日常の調整も仕事の一部です。職務経歴書には載せにくい作業ほど、自分の価値として数え損ねることがあります。まず実際にしていることを過不足なく並べるのが、次の準備の土台です。

調査の「37%」は何を示し、何を示さないか

AI雇用不安の調査結果と個人の将来予測を区別する図

マーサーの調査は、世界16地域・16業界の経営幹部、HRリーダー、投資家、従業員など計約1万2,000人を対象に、2025年9月から10月に行われました。同社の発表によると、AIによる雇用喪失への不安は世界全体で2024年の28%から2026年の40%に上がり、日本では37%でした。これは「日本の仕事の37%がなくなる」という意味ではありません。数字の対象を読み違えると、不安を必要以上に大きくしてしまいます。

同じ発表では、自分のスキルが今後も通用するかを懸念する従業員が世界全体で2024年の17%から2026年の47%へ増えたとしています。日本の従業員の65%は、AIやデジタルスキルを学ぶ機会を得られるなら、給与10%増を犠牲にしてもよいと回答しました。これも回答者の意向を示す数値です。実際に給与を下げるべきだという助言でも、学習すれば収入が増えるという保証でもありません。

数字を自分に引き寄せるなら、「怖いから辞める」「みんなが学ぶから自分も資格を買う」へ急ぐより、今の職場で学ぶ機会があるか、担当作業のどこが変わっているかを確認してください。AIの導入方針がまだ決まっていない職場と、既に利用規程や研修が整っている職場では、明日から取れる行動も違います。調査は不安の広がりを理解する材料であって、あなたの勤務先の将来を判定する資料ではありません。

ニュースを読むときには、発表日と調査期間も分けて見ます。今回の回答は2025年秋に集められたもので、2026年のある日の求人状況を直接測ったものではありません。大きな見出しをそのまま職種別の予測に使わず、調査で尋ねた内容と、自分が判断したい問いが同じかを確かめましょう。

AIに任せる部分と、人が確認する部分を分ける

下書きと最終判断の役割を分ける仕事の例

文章の要約、案の比較、見出しづけ、定型文の下書きなどは、生成AIの使い道として考えやすい作業です。しかし、出力された文章が社内の最新規程と一致するか、顧客へ送ってよいか、例外に当たるかは別の判断です。「AIを使った」というだけでは、仕事の品質が上がったことになりません。下書きに使う場合も、何を入力し、何で照合し、誰が承認するかを作業手順へ組み込みます。

たとえば会議メモなら、発言から論点候補を整理する工程と、決定事項、期限、担当者を参加者へ確認する工程を分けます。求人比較なら、複数の求人票から勤務地や時間を抜き出す作業と、自分の生活条件に合うか選ぶ判断を分けます。後者には家族の事情や通勤負担のように、外からは見えにくい条件も入ります。AIの出力が整って見えても、条件を読み落としていないかは人が確認します。

会社の情報を使う前には、利用が認められたツールと入力できる範囲を確認してください。顧客名、個人情報、社外秘の資料を、便利そうだからという理由で個人用のサービスへ入れないことが前提です。安全な検証ができないなら、架空の例や公開情報を使って操作方法を学び、実務への適用は会社の方針が明確になってから考えます。実務で使っていない学習例を、職務実績として書くことも避けます。

人の役割は「AIにはできない仕事」という曖昧な表現より、具体的な判断で説明できます。優先順位を変えた理由、問い合わせの意図を確認した場面、誤りを発見したチェック、関係者と合意した手順を思い出してみてください。AIを使うかどうかとは別に、それらを言葉にできれば、現在の仕事の価値と次の職場で伝えたい経験が見えやすくなります。

いまの仕事から改善例を作るときの記録方法

課題、試した方法、確認、結果を記録するメモの構成

転職のために突然大きなAIプロジェクトを始める必要はありません。まず毎週繰り返す仕事から、時間がかかる理由を一つ選びます。例えば社内文書を探す時間が長いのか、問い合わせの分類が曖昧なのか、下書き後の確認で何度も戻るのか。問題の場所を決めずにツールだけ増やすと、使った事実は残っても、何が改善したかは説明できません。

記録には「以前はどの工程で困っていたか」「どの情報を使い、どの範囲だけAIへ任せたか」「出力を何と照らして確認したか」「結果として何が変わったか」を残します。測定していない短縮時間を後から数字にしないでください。時間を測れるなら、対象作業と測定方法を揃えて前後を比較します。測れないなら、確認手順が明文化された、引継ぎで参照する資料が整った、複数の案から選ぶ基準が言葉になった、と観察できた変化を書く方が誠実です。

うまくいかなかった例も役立ちます。AIが誤った項目を混ぜたため、どの資料を根拠にするかを先に指定した。長い文書の要約で重要な例外が抜けたため、対象範囲を区切って照合した。このような改善過程は、単にツールを触ったという記録より、仕事の中でどう品質を守ったかを示します。ただし、実際に行っていない検証を面接用の話として作ってはいけません。

勤務先でAIの使用許可がない場合は、仕事の改善記録と自主学習を別にします。実務では手順書の見直しや確認表の整理をし、公開情報だけを使って個人学習をする方法もあります。採用側へ話すときには、実務で担当したこと、自主的に試したこと、これから学びたいことを分けてください。肩書きやツール名を増やすより、事実の境界が明確な方が、経験の中身を伝えやすくなります。

求人票で、今の経験がどこへつながるか確かめる

求人の仕事内容と自分の経験を一対一で照らす表

AIへの不安があると、「AI人材募集」という言葉が目に入りやすくなります。しかし、自分が転職したい仕事に必要な経験は、職種名だけでは分かりません。求人票の仕事内容、雇用形態、就業場所、就業時間を読み、何を任されるのかを具体的に確かめます。ハローワークの求人情報の見方でも、仕事内容は重要な項目であり、分からないことは相談窓口へ確認できると案内されています。

求人を比べるときは、AIという単語の有無だけで判断せず、日々の担当作業に注目します。資料の作成が中心なのか、顧客の要件を聞くのか、作業の正確さを確認するのか、関係者の進行を調整するのか。自分が既に行っている作業と重なる部分を探し、足りない部分は経験、学習、応募先への質問に分けます。職業情報提供サイトjob tagも、同じ職業であっても職場ごとに仕事内容や労働条件は同じではないと注意を促しています。

例えば「業務改善」と書かれた求人でも、現場の手順を聞き取る仕事なのか、集計方法を整える仕事なのか、システム導入の調整なのかで必要な経験は変わります。求人票だけで具体像が見えなければ、面接で現在の業務例、使えるツール、導入後の確認体制を聞きましょう。学習機会があると書かれていても、勤務時間内にどのような実務へ結びつくのかまでは、個別に確認が必要です。

「未経験でもAIを学べる」という表現にも、期待を一つにまとめすぎない方がよいでしょう。研修を受けることと、担当業務で使うこと、成果を評価されることは別です。応募前に全て分からなくても、分からない点を質問として書き出せます。今の職場に残る場合にも同じ問いが使えます。仕事で何を試せるか、誰が確認するか、学習した内容をどの業務へつなげられるかを上司へ尋ねる材料になります。

転職、異動、現職での学習をどう選ぶか

転職、異動、現職での学習を条件別に比較する図

不安を感じた時点で、すぐ転職するか、そのまま我慢するかの二択にしなくて大丈夫です。現在の職場で担当作業を広げられるか、異動によって学べる仕事があるか、外部の求人で条件が合うかを並べて考えます。比較する条件には仕事内容だけでなく、収入、通勤、労働時間、学習の機会、相談できる相手を入れます。AIを学べると聞いても、生活を支える条件を外してよいわけではありません。

現職で試せることがあるなら、まず利用規程と相談先を確認し、小さな改善の場を探します。異動を考えるなら、希望先の業務内容を聞き、自分の経験が使える部分と新たに学ぶ部分を整理します。転職を考えるなら、求人票と面接で実務の中身を確かめ、募集文の印象だけで決めないことです。どの選択肢にも不確実さはありますが、同じ確認項目で並べると、何を優先したいかが見えます。

一方、今の職場での負担が大きく、情報を集める余裕もない場合は、先に休息や身近な相談先を確保する判断もあります。この文章は個別の健康状態や法律上の対応を判定するものではありません。自分の状況に応じて専門家や公的な相談窓口へ相談してください。キャリア上の選択は、情報を十分に得てから考える方がよい一方、心身の安全を後回しにする理由にはなりません。

最後に、今日できる一歩を小さくします。担当業務を一つ選び、作業の流れを紙に書き、AIが助けられそうな工程と、人の確認が必要な工程を分ける。次に求人票を一つ読み、その仕事で求められる作業と比べる。これだけで、漠然とした「仕事がなくなるかも」から、確認できる差へ視点が移ります。結論を急がず、自分の経験を事実のまま持って次の選択肢を調べましょう。

よくある疑問と、判断を急がないための答え

AIと転職についてよくある三つの疑問を整理する図

AIでなくなる職種を先に調べた方がよいですか

大きな職種分類の予測を読むこと自体はできますが、それだけで自分の転職を決めないでください。同じ職種でも、担当する作業と責任範囲は職場で異なります。自分の仕事内容を分けてから求人票と照合する方が、足りない経験や質問したい点を具体的にできます。予測記事の対象国、期間、職種の定義も併せて確かめましょう。

今からAIエンジニアへ転職すべきですか

AIが広がることと、全員に開発職への転向が必要なことは別です。現在の専門分野や現場経験を生かし、そこで何を改善できるかを探す道もあります。開発職に興味がある場合は、仕事の内容、必要な基礎、学習に使える時間を調べ、自分が続けたい仕事と合うか判断してください。流行している職種名だけで、これまでの経験を捨てる必要はありません。

職務経歴書にはAI経験をどう書けばよいですか

ツール名の列挙より、課題、担当した範囲、使った情報、確認方法、実際に観察できた結果を書きます。実務で使用したなら会社の規程に沿っていたかも説明できるようにします。自主学習なら「自主制作」や「学習」と記し、勤務先での成果と混同させないことが大切です。数値がない結果に架空の短縮時間や売上効果を付け足さないでください。

AIへの不安をなくす魔法の答えはありません。ただ、調査結果を自分の将来の予言として受け取らず、仕事内容、利用条件、求人を順に確認すれば、次に何を聞くべきかは具体化できます。一人で整理しにくい場合は、今の作業と優先したい条件を持ってキャリア相談を利用する方法もあります。無料キャリア相談の案内を確認する

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